こんにちは、すあまです。
今日は自分が読んだ論文について紹介していきたいと思います。
今回読んだ論文は「3D Cell Culture in Alginate Hydrogels」という論文です。
出典:3D Cell Culture in Alginate Hydrogels
1.概要
まず、ざっくりとした概要を説明すると、この論文では「3Dで細胞を培養する際のアルギン酸塩、特にアルギン酸塩ヒドロゲルの使用に関する情報」がまとめられています。
本ページでは、その論文で特に興味を持った部分について書いていきます。文の後ろについている[]内の番号は、論文の参考文献の番号と対応しています。
2.序論
• ゲルの弾性とヒドロゲルの安定性は、
- 使用するアルギン酸塩の種類
- 使用するアルギン酸塩の濃度
- ゲル化手法の選択(イオンまたは共有結合)
- ゲル誘導イオンとして選択した2価カチオン
以上の条件に影響を受ける可能性が示唆されている。
• ペプチド結合アルギン酸塩を使用すると、細胞とマトリックスの相互作用を制御できる。
3D培養によるメリット
- 悪性細胞の腫瘍形成を観察できる
- より精度の高い医薬品開発における安全性試験が可能
- 移植後の多細胞組織のin vitro培養が可能
組織を構成するほぼすべての細胞は、細胞外マトリックス(ECM)に存在している。
ECMは、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、糖タンパク質の高度に水和されたゲル状材料に埋め込まれたコラーゲンと弾性繊維の複雑な3次元(3D)繊維網目で構成されている。
3.アルギン酸
アルギン酸塩の特性
- 生理学的条件でヒドロゲルを作る能力→細胞を生かしたままゲル構造を保持できる
- 細胞回収のためのゲルの穏やかな溶解→ゲルよる細胞への影響を観察できる
- 顕微鏡評価のための透明性→光学顕微鏡(倒立顕微鏡)によって細胞を観察できる
- 非動物起源に加えて栄養素および老廃物の拡散を可能にするゲル細孔ネットワーク
→3次元培養が可能になる(?) - アルギン酸塩での細胞のカプセル化を説明する標準ガイドはASTM International [ 15 ] から入手できる。
- 中性pHで、アルギン酸は、それぞれ3.38および3.65 のpKa値であるd-マンヌロン酸およびlグロン酸のために、ポリアニオン特性を持っている[ 21 ]。
- したがって、pKa未満の酸性化は不溶性アルギン酸につながるが、溶液中のアルギン酸分子は、隣接する負電荷間の分子内静電反発により、ランダムコイルの立体構造が拡張される。
- これにより、粘度がイオン強度、温度、分子量の影響を受ける。
- 低濃度でもアルギン酸塩の高粘性溶液が得られる[ 21 ]。
- 細胞にはアルギン酸塩を認識する受容体がなく、市販の通常のアルギン酸塩は超高品質であれば不活性と見なすことができる。
- 生物医学用途のアルギン酸塩で考慮および管理されるべき不純物は、ASTM F 2067に示されており、エンドトキシン、タンパク質汚染物質、元素不純物、微生物バイオバーデンのレベルに関連している[ 22 ]。
- アルギン酸塩は、Mgいがいの2価陽イオン存在下でゲルを形成することができる
- アルギン酸塩は、Ca 2+ <Sr 2+ <Ba 2+のように、二価カチオンに対して異なる親和性を示す[ 28 ]。
- アルギン酸ゲルネットワークのナノスケールの多孔性は調整可能で、5〜200 nmの範囲である[ 29 ]。
→これは、栄養素および老廃物及び例えばインスリン、ドーパミン、エンドスタチン及び神経成長因子のような合成生成物の除去を可能にしうる[30、31 ]。 - イオン的にゲル化したアルギン酸塩は、クエン酸やエチレンジアミン四酢酸(EDTA)やヘキサメタリン酸などの二価陽イオンのキレート剤で処理することで溶解できる[14]。
- 共有結合によるゲル化方法も研究されている
- RGD結合アルギン酸塩(図3)はアルギン酸ヒドロゲルと細胞との間の生物学的相互作用を開始する能力を持っている[56、57 ]。
4.3D細胞培養
- 従来の細胞培養はプラスチックまたはガラス表面で単層(2D)で行われる。
- しかし、人工の平坦で硬い材料表面に適応することを細胞を強制すると、細胞代謝および変更を変更したり、機能を低下させることにより、予想される動作と同様ではないかもしれない結果をもたらす。
- 細胞固定化のための3D細胞培養にはいくつかのアプローチがある。
- 架橋密度に加えて、アルギン酸塩の濃度、アルギン酸塩の種類、および架橋技術の選択(イオンまたは共有)を最適化することにより、アルギン酸塩ヒドロゲルは、ほとんどの種類の組織の弾性に一致するように作成可能(図5)。[69、74、75、76]。
- マクロポーラス足場は、栄養素、酸素、老廃物の物質移動が強化されるため、より大きな構造物を可能にする可能性がある[ 100 ]。
- 2014年10月、米国食品医薬品局(US FDA)が主催する公開ワークショップが、「医療機器の積層造形:3Dプリントの技術的考慮事項に関するインタラクティブな議論」というタイトルで開催された。
→このワークショップで開催されるワークショップの議題、参加者、およびプレゼンテーションは、米国FDAのWebサイトで入手可能[ 116 ]。
5.展望
- 凍結保存にも使える?
- 皮膚の3D培養により、皮膚疾患のメカニズムの検証や実験薬の治療可能性の試験など、動物や人間にとって安全でない皮膚科学的研究が可能になる
心筋幹細胞を足場内に固定することで、移植後も心筋組織内に留まることが示された[ 138 ] - Gに富むアルギン酸ヒドロゲルが心臓治療を目的としたMSC培養に最も適していた[ 139]
6.結論
- 近い将来、細胞間相互作用、組織への成長、幹細胞分化のメカニズム、および薬効の改善を調査するために、細胞を3次元で培養する方法が推奨されると考えられる
- アルギン酸塩は、RGDなどの細胞外マトリックスタンパク質を模倣するペプチドの付着により修飾でき、それにより、固定化された細胞がアルギン酸塩ヒドロゲルと相互作用している
まとめ
いいかがだったでしょうか?
興味を持ったところのみを紹介したので話が飛んでいる部分もあったかと思いますが、詳細が気になった方は是非リンク先の原文を読んでみてください!
それでは、最後までお読みいただき、ありがとうございました!