SUAMA LAB

日々学んだこと、主に科学一般やプログラミング、ライフハックについて発信していきます。

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ニワトリ胚由来筋芽細胞の増殖・分化に関する実験プロトコル

こんにちは、すあまです。

今回はニワトリ胚の筋芽細胞を用いた実験について、プロトコルを紹介していこうと思います。

  • ニワトリ胚由来の筋芽細胞をどのように単離、培養するのか
  • ニワトリ胚由来の筋芽細胞の培養について、どのプロトコルで何を評価することができるのか

上記について、この記事で紹介していきたいと思います。

①ニワトリ胚由来筋芽細胞の単離

  1. ニワトリの受精卵を35℃で胚芽10日目まで培養した。
  2. 10日胚から大胸筋を取り出し,ミンチにして0.25%のトリプシンを含むハンクス平衡塩水溶液中で37°C,5% CO2で30分間培養した。
  3. トリプシン処理したサンプルは、濾紙で濾過し、遠心分離した。
    (この手順を3回繰り返し、筋肉の残骸を除去した。)
  4. 細胞を10%FBSを含むDMEMに再懸濁した。濃度は3*10^5個/mlとした。
  5. 線維芽細胞を除去
    (分離ステップを3回繰り返し、代表的な培養物をデスミンの存在で染色した。)
  6. デスミン染色後、細胞培養物中の筋芽細胞の割合を計測した。
  7. すべてのニワトリの細胞培養物は、分離後5日以内に使用した。

②細胞増殖アッセイ

  1. 培養細胞を4%パラホルムアルデヒドで5分間固定した。
  2. 細胞の核を4,6-ジアミノ-2-フェニリドンで染色した。
  3. 細胞を洗浄し、観察した。
  4. 各フィールドについて画像解析システムImage Pro plusを用いて核の数をカウントした。
  5. 1ディッシュにつき10フィールドをカウントし、各条件に3ディッシュを使用した。

クレアチンホスホキナーゼ活性の測定

クレアチンホスホキナーゼは心筋、骨格筋、平滑筋にある酵素で、この濃度を計測することにより、培養した筋芽細胞の筋細胞への分化の程度を定量的に評価することができます。

  1. 前述の方法で細胞を培養し、分化させた。
  2. まずフラスコを0.1Ìg/mlのコラーゲンI、コラーゲンIV、ラミニン、フィブロネクチン、ウシ血清アルブミン(BSA)のいずれかで1時間コーティングした後、洗浄した。
  3. 細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した後、2mlのPBS存在下でフラスコの表面から掻き出した。
  4. この細胞懸濁液を 1分間ホモジェナイズ。
  5. タンパク質の定量は,BCA protein 決定キット(Pierce, Rockford, Ill., USA)を用いて行った。
  6. メーカーの指示に従い、細胞懸濁液0.1mlをクレアチンホスホキナーゼ(CPK)のバイアル1本に加え、 3mlの蒸留水で希釈した。
  7. この混合物を数回反転させた後、キュベットに移した。
  8. 5分後、340nmのベースライン値を記録した。
  9. 5分後に2回目の340nmの測定を行った。
  10. 最初の測定値と最後の測定値の差を用いて、サンプル中のCPK活性を算出した。

④Sarcomeric Actin産生の測定

この実験ではアクチンという、筋繊維に含まれているタンパク質の産生量を定量的に計測することで、分化した筋細胞がどれくらい成熟しているかを評価することができます。

  1. 細胞をコンフルエントになるまで培養し、筋管形成を促した。
  2. 細胞をPBSでリンスした後、mlのPBSの存在下でフラスコの表面から掻き取った。
  3. 細胞懸濁液を1分間ホモジェナイズし、 1mlの溶液をサンプルバッファーで1:1に希釈した。
  4. 蛋白質の測定(上述の通り)の後、各サンプルのタンパク質濃度を同じ値に調整した。
  5. 10 μgのタンパク質を含む細胞懸濁液4 μLを、 ドットブロットによりニトロセルロースフィルターに塗布した 。
  6. その後、膜をトリス緩衝生理食塩水(TBS)に溶かした3%の牛乳で1時間ブロッキングした。
  7. その後、ブロットをTBSで十分に洗浄し、アルカリホスファターゼ標識二次抗体をTBSで1:10,000に希釈したものを用いて、室温で1時間インキュベートした。
  8. TBSで十分に洗浄した後、タンパク質スポットを5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルリン酸/ニトロブルーテトラゾリウムを用いて可視化した。
  9. ドットブロットはNIH Image (Wayne Resband, NIH, Bethesda, Md., USA, プログラムは次のサイト( zippy.numh.nih.gov )からftpで入手可能) を用いて分析した。

以上が今回紹介したかった実験プロトコルになります。

自分はこんな実験でやっている、このような場合はどんな実験をすればいいのか等、ご意見・ご質問があればご連絡いただけると幸いです!
最後までお読みいただきありがとうございました!

 

医薬品開発①:医薬品開発の歴史と概要

こんにちは、すあまです。

今日は、医薬品開発の流れについて書いていきたいと思います。

書く前にあらかじめ断っておくと、創薬は非常に複雑な分野です。医薬品産業全体について知識を十分に得ようとすると、その内容は非常に膨大になります。

そのため、このページではまず「医薬品開発の歴史」と「現在の医薬品開発の全体像」について説明します。

次回以降の記事で、それぞれの流れにおけるルール(法律や省令)や実際に必要となる知識について説明していきたいと思います。

私自身もまだまだ至らぬ点が多いと思うので、一緒に勉強するつもりでこのページを見ていただければ幸いです。

それでは、医薬品開発の流れについて書いていきたいと思います。

1.1医薬品開発とは

まず、医薬品開発の流れについて説明する前に、「医薬品とは何か?」ということをハッキリさせておかなければなりません。

1.1.1.医薬品の定義 

医薬品は国の法律によって定められています。

日本では、「医薬品医療機器等法」という法律によって明確に定められています。(この法律については後で説明するので、今はそのような法律があるという認識で大丈夫です。)

この医薬品医療機器等法の定義によると

(定義)第二条 この法律で「医薬品」とは、次に掲げる物をいう。
第一号 日本薬局方に収められている物
第二号 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であって、機械器具、歯科材料、医療用品及び衛生用品(以下「機械器具等」という。)でないもの(医薬部外品を除く。)
第三号 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であって、機械器具等でないもの(医薬部外品及び化粧品を除く。)

というのが医薬品の定義のようです。

少し文章が固いので、ひとつずつ解説していきます。

まず第一号の「日本薬局方に収められている物」ですが、日本薬局方は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第41条により、医薬品の性状及び品質の適正を図るため、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて定めた医薬品の規格基準書です。つまり、「日本薬局方という『リスト』に載っているものは医薬品だよ」ということです。

しかし、それだけだと「じゃあそのリストに載ってるものってなんやねん?」となるので他にも説明があります。

そこで、第二号は「人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であって、機械器具、歯科材料、医療用品及び衛生用品(以下「機械器具等」という。)でないもの(医薬部外品を除く。)」と説明、第三号では「人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であって、機械器具等でないもの(医薬部外品及び化粧品を除く。)」。

これらに関して簡単に説明すると

  1. ヒトや動物の病気の予防、診断、治療のどれかに使うためのもの
  2. ヒトや動物の構造や機能に影響するもの
  3. 機械や歯科材料などではないもの

以上の3つの条件を満たしているものが医薬品である、ということです。日常の中で使ている医薬品について考えてもらうと、病気(もしくは何らかの不調)の治療や予防などのために使っているはずです。また、これらの医薬品はそれを服用した人のどこかに作用して病気や不調を治す(もしくは軽減させる)ような働きをしています。そして、注射器や補聴器なども病気に使われますが、これらは医療機器であって医薬品ではないので3番目の条件が書かれています。

以上が法律によって定められた医薬品の定義です。

一応、上で紹介した医薬品医療機器等法についても説明しておきます。

医薬品医療機器等法:医薬品の生産及び流通について定められている法律
正式名称は医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
医薬品医療機器等法は公式略称であるが、さらに縮めて「医薬品医療機器法」、「薬機法」と略されることもある。
昭和35(1960)年8月10日法律第145号

ここまで、法律や定義の話をしてきました。次に医薬品がどのような特徴を持つのかということについて書いていきます。

1.1.2.医薬品の特徴

ここでは、医薬品の特徴を紹介していきたいと思います。2つの特徴を見ながら「こんな特徴を持っているものが医薬品なのか」と思っていただけたら幸いです。

a.医薬品は疾患の治療に有効な作用(主作用)と同時に望ましくない作用(副作用)を示すものがある

まず、前の項で説明したように医薬品は「ヒトや動物の病気の予防、診断、治療のどれかに使うためのもの」という定義があります。つまり、ヒトや動物に対して行ってほしいはたらき(作用)があるということです。

このような、目的となる作用のことを主作用といいます。

一方、医薬品には「ヒトや動物の構造や機能に影響するもの」という定義もあります。そして、その影響は狙ったところにのみ働くだけではなく、予期していない(もしくは目的としていない)ところに及びます。

このような、目的と異なる作用のことを副作用といいます。

以上のように、医薬品には有効な作用(主作用)と望ましくない作用(副作用)があります。

b.医薬品は品質、有効性、安全性の3要素を一定のレベルで満たす必要がある。

新薬となる候補化合物が規制当局(日本では厚生労働省)によって製造販売することが承認され、医薬品として社会に認められるためには

  1. 品質(Quality)
  2. 有効性(Efficacy)
  3. 安全性(Safety)

の3要素を一定のレベルで満たす必要があります。

 まず、一定の品質を保っていないと、本来の有効性や安全性を保持することができません。また、有効性を示さない医薬品は、そもそも医薬品としての意味がありません。そして、安全性が基準を満たしていない医薬品は、有効性を示すものであったとしても患者さんに対して悪影響を及ぼしてしまいます。

そのため医薬品は、上記に挙げた3要素を満たしている必要があります。

ここまで、医薬品開発における医薬品とはどのようなものなのかについて説明してきました。次の項では医薬品開発と医薬品開発に対する規制の歴史について説明していきます。

1.2医薬品開発と規制の歴史

本項では、医薬品開発と規制の歴史について説明します。

医薬品開発がかつてどのように行われていたのか学ぶことで、現在の医薬品開発に対する規制がなぜ必要なのかを知っていただければと思います。

1.2.1医薬品開発の歴史と変遷

a.医薬品開発の起源

医薬品の歴史は、天然に存在する植物、動物、鉱物等から薬効のあるものを経験的に見つけ出し、そのままの形で利用することから始まりました。

人類が薬草等を病気の治療に利用していた記録としては世界四大文明が興っていた紀元前2000年ごろのものが最古です(諸説あり)。

しかし、有史以前から薬草等の利用は始まっていたものと考えられます。

もともと医療は宗教と深く結びついており、呪術等と併用される形で、天然物がそのまま、もしくは煮る、焼く、煎じる、乾燥する等の簡単な加工を施して、薬として利用されていました。

b.医薬品開発手法の大きな変革につながる技術の基礎をもたらした錬金術の取り組み

錬金術の取り組みは、物質の抽出、単離、精製といった科学の基本操作の発達をもたらしました。

その結果、薬草等から有効成分だけを抽出し、純度の高い物質に生成し、医薬品として利用できるようになりました。

20世紀に入ると有機化学の発展により、天然には存在しない化学物質の合成が盛んに行われるようになりました。

化学構造からその物質の薬理作用を推定して候補物質を絞り込むための構造活性相関の研究も進められました。

c.近年の医薬品開発

従来、医薬品開発には化学を応用した技術(低分子化合物の合成)が主に用いられていたのに対し、近年は医薬品開発においてバイオテクノロジー(生物学の発展によって得られた技術)が応用されるようになっています。
医薬品開発にバイオテクノロジーが応用された例として、

などが挙げられます。

このほかにも、中分子医薬品や再生医療等製品などの開発も行われるようになってきています。これらの治療手段のことをモダリティといいます。モダリティに関しては別の記事でさらに詳しく解説します。

本項では、すでに盛んにおこなわれている遺伝子組み換え技術、ゲノム創薬、抗体医薬についてどのようなものか説明します。

遺伝子組み換え技術

遺伝子組み換え技術は、生物の「設計図」にあたる遺伝子を組み替える技術である。
医薬品開発においてこの技術を用いることで、人工的に作ることが難しい複雑な物質(タンパク質)を大腸菌などの微生物に大量生産させることができる。
これにより、ホルモン製剤(糖尿病に用いるインシュリンなど)等の効率的な生産を行うことができる。

ゲノム創薬

従来、医薬品開発は研究者の経験や類似の病気に対する薬剤の情報等をもとに膨大な種類の候補化合物を合成し試験するという手法が一般的であり、実用化に至るまでに長い期間と労力を要してきた。
それに対し、2003年にヒトゲノム計画(ヒトの遺伝子の全配列を解読しようという複数の国家によるプロジェクト)が完了し、様々な研究によってそれぞれの遺伝子の役割も少しずつ明らかになってきた。
それらの情報を活用する技術が急速に発達した近年では、病気と関連する遺伝子を特定しその遺伝子や、コードされているタンパク質をコントロールできる薬の開発を行う方法が主流になってきている。
このような医薬品開発の手法をゲノム創薬という。

抗体医薬品

抗体とは、病原体などが体内にはいったとき、それと特異的に反応する物質として体内に生ずるものの総称である。
この抗体を医薬品に応用したものが抗体医薬品で、抗体の物質に対する特異性を活かして薬のターゲットとなる部分に得意的に作用させることができるという利点を持っている。
そのため、従来の医薬品と比較して高い治療効果と副作用の軽減が期待できる。

 

d.医薬品開発の歴史と変遷まとめ

医薬品開発は天然に存在するものを経験的に用いていた時代から様々な技術革新を経て現在までの歴史を歩んできました。
医薬品の開発に携わる人々は、昔からの開発手法と新しく生み出される科学技術を組み合わせて活用していくことで現在までの医薬品産業の発展を支えています。

1.2.2評価手法の発展

医薬品開発の歴史で紹介したように、もともと医薬品は天然物を利用することから始まりました。
そのため、医薬品開発の歴史には数々の試行錯誤がありました。
たとえば、古代中国では不老長寿の薬として水銀が用いられていました。その毒性によって、もしかしたら命を落としたものもいるかもしれません。

これに対し19世紀頃から、化学分析技術の発展により、品質の評価が化学的に行われるようになりました。

冒頭で、「医薬品は品質、有効性、安全性の3要素を一定のレベルで満たす必要がある」という説明をしました。この時代、医薬品の品質に関してはある程度の基準が設けられていた一方、その有効性と安全性に関しては未だ経験則に基づいていました。

しかし、20世紀に入ってから化学合成技術を駆使した新薬の数々が開発されるようになり、それらの新薬の有効性や安全性を客観的に評価する手段が必要とされるようになりました。

これらの流れに伴い、新薬の非臨床試験(動物などを用いる試験)や臨床試験(実際に新薬の候補を人に投与する試験)の手法が生み出され、先進国では規制当局(アメリカにおけるFDA、日本における厚生労働省など)による医薬品の承認審査が制度化されました。

1.2.3医薬品の安全性試験の発展

医薬品の評価の厳格化を一気に加速させた出来事として、サリドマイド事件が知られています。医薬品の安全性評価制度のに対し、非常に大きな影響を及ぼした事件なので、興味のある方は自身で調べてみるのもよいかもしれません。

下記に概要を載せておきます。


サリドマイド事件は、戦後の経済成長期であった1960年前後に、サリドマイドという医薬品の副作用により、世界で約1万人の胎児が被害を受けた薬害事件である。この薬には、妊娠初期に服用すると胎児の発達を阻害する副作用があった。被害児の多くは命を奪われ(死産等)、あるいは四肢、聴覚、内臓などに障害を負って生まれた。わが国では、世界で3番目に多い約千人(推定)が被害に遭い、生存した309人が認定されている。
サリドマイドは、1957年、旧西ドイツで鎮静・催眠薬として開発され、日本では翌58年に1時間半の簡単な審査で承認された。一方、米国では胎児への影響に関するデータがないとの理由で許可されなかった。発売後は安全な医薬品と宣伝され、妊婦のつわり止めにも用いられて(日本では胃腸薬にも配合)、被害が多発した。
1958年以降、新しいタイプの奇形の子どもが次々と生まれ、61年11月、ドイツのレンツ博士の調査によりサリドマイド剤が原因と疑われると警告された(レンツ警告)。欧州各国では直ちに薬が回収されたが、日本では62年9月まで何の対策も取られず、この対策の遅れ(行政の不作為)により被害が倍増した。被害児の親たちは、薬害の再発防止を願い訴訟に踏み切った。製薬企業と国が責任を否定して争った裁判は10年に及んだが、74年に被害者の主張を全面的に認めた和解が成立し、被害者の福祉センターとして財団法人いしずえが設立された。


1950年代後半から1960年代前半にかけて発生したサリドマイド事件は全世界に衝撃を与え、催奇形性(妊娠中の子供が奇形児となる毒性)、遺伝毒性、発がん性等の安全性試験導入のきっかけとなりました。

また、米国食品医薬品局(FDA)は、1962年以降の医薬品の承認申請において、客観的で定量的な有効性判定基準に基づく比較対照試験(医薬品を投与した人とそうでない人の予後を比較するような試験)の実施を義務付けました。

その後、ICH(医薬品規制調和国際会議)等による検討に基づき、評価手法の改良・発展が進められ、現在に至ります。

承認申請前の臨床試験等によって得られる有効性・安全性に関する情報には、症例数、試験期間、被験者の範囲等の制約から限界があることが認識されており、医薬品は発売後に広く医療現場で使用されるようになった段階での有効性・安全性の評価も実施されています。

それでは、医薬品の品質や有効性、安全性を評価するための手法について定めているICH(医薬品規制調和国際会議)とはそのような機関なのか説明します。

1.2.4ICH(医薬品規制調和国際会議)

まず、ICHの概要について説明します。

ICHとは、International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)の略称です。
 ICHは、医薬品規制当局と製薬業界の代表者が協働して、医薬品規制に関するガイドラインを科学的・技術的な観点から作成する国際会議で、他に類がない場となっています。ICHは、1990年の創設以来、グローバル化する医薬品開発・規制・流通等に対応するべく、着実に進化を遂げてきました。ICHの使命は、限られた資源を有効に活用しつつ安全性・有効性及び品質の高い医薬品が確実に開発され上市されるよう、より広範な規制調和を世界的に目指すことです。
 2015年10月23日、ICHはスイス法人化に伴い、組織再編をしました。その結果、現在のICHは、全ての参加メンバーで構成され法人の主体となる総会(Assembly)、総会での議論の準備や法人の運営を担う管理委員会(Management Committee)、専門家がガイドラインの議論を行う各作業部会(Working Group)等から成り立っています(図1)。

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図1.ICHの組織図

新しい医薬品のスムーズな普及をするためには、それぞれの国(地域)ごとに異なる医薬品の承認基準が課題です。

それぞれの国(地域)ごとに異なる申請資料を作成しなければならないなどの理由によって新薬の普及が遅れるようなことを避けるため、各国の承認審査制度や承認基準を国際的に調和する必要があります。

このような目的を達成するために、ICHという組織が1990年に設立されました。
ICHは現在日本、アメリカ、EUの規制当局と製薬団体などを中心に構成されており基準を満たす規制当局や製薬団体も新たに加盟することができます。

ICHで議論される内容は、品質、安全性、有効性および複合領域の4つの領域に分類されます。

各トピックにはQ、S、E、Mの頭文字、各領域内での番号及びその中の細かい項目を表すアルファベットを組み合わせたコードが割り当てられ、そのトピックごとに規制当局、製薬業界、大学等の研究者で構成される作業部会(WG:Working Group)が設置されます。

各々のWGはガイドライン案を作成、検討し、その進捗状況を管理委員会に報告します。

管理委員会はICH全体の進捗状況の管理や分野間の調整、総会が決めなければならない事項以外の決定等を行います。

進捗状況は下記の表のようにステップ1〜5の5段階で示され(表1)、2016年11月現在、78のガイドラインがステップ5に到達し、各国における国内規制に取り入れられています。

表1.ICHガイドラインの合意までのステップ

ステップ1 新しい調和ガイドラインを作成する提案が新しいトピックとして総会により承認を受けると、専門家作業部会が設置されます。専門家作業部会では協議を重ねて技術ドキュメント(ガイドライン案のベース)を作成します。
ステップ2
ステップ2a: 技術ドキュメントの確認
ステップ1の技術ドキュメントが総会で承認されるとステップ2aとなります。
ステップ2b: ガイドライン案の採択
ステップ2aの技術ドキュメントをベースにしたガイドライン案が総会の規制当局代表者により承認されるとステップ2bとなります。
ステップ3 ICHの各地域・国の規制当局(日本では厚生労働省)からガイドライン案が公表され、公に意見が求められます。寄せられた意見に基づいて専門家作業部会で協議が行なわれ、ガイドライン案が修正されます。
ステップ4 ガイドライン案が総会の規制当局代表者によって最終的に合意、採択されるとステップ4となります。
ステップ5 ICHの各地域・国の規制当局において、それぞれの手続きにしたがってガイドラインが実施されます。
日本では、厚生労働省医薬・生活衛生局から通知されます。

1.3医薬品開発の全体像

• 新薬の開発プロセスを図1.3.1に載せます。

• 図に示したように、医薬品開発には数多くのステップがあり、1つの新薬の開発には、期間として9〜17年、費用として500〜1000 億円要すると言われています。

医薬品開発は非常に長い期間と莫大な資金が必要であり、規制も厳しく設定されているため、様々な専門性を持った人たちが協力して取り組む必要があります。

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図1.3.1 医薬品開発の流れと主な規制・制度



1.3.1新薬開発プロセス

①新薬の開発は、有効成分となる化合物の探索から始まります。

化合物の探索には

  • 動植物や微生物等の天然物からの単離
  • 化学合成
  • 遺伝子組み換え

などの場合があります。

②化合物の探索ではスクリーニングによって候補物質の中から絞り込みが行われます。

絞り込んだ候補物質について

  • 物理化学的な性質
  • 精製方法

などに関する研究を行います。

③常に均質で安定した形で候補物質を供給するために剤形、投与経路を検討します。

④その後、非臨床試験によって新薬の安全性、有効性、品質の厳密な検証が行われます。

 非臨床試験では実験動物を用いて

  • 候補物質の安全性
  • 候補物質の薬物動態(体内での動き)
  • 候補物質の薬理作用について調べられる。

非臨床試験により、臨床試験へ進むか否かが判断されます。

非臨床試験をクリアした新薬候補を用いて臨床試験が行われます。

臨床試験は主に3つの段階があります。

  1. 有害作用が現れない最大投与量や薬物動態を調べる「第Ⅰ相試験」 有効性と安全性のバランスが
  2. 取れた投与量を探索する「第Ⅱ相試験」
  3.  二重盲検比較試験により有効性と安全性を検証する「第Ⅲ相試験」

⑥製薬企業は品質、有効性、安全性について収集した資料を添付して、厚生労働大臣医薬品医療機器等法に基づく製造販売承認申請を行います。

⑦ 承認が得られれば、製造販売することができます。

以上が医薬品開発の大まかな流れです。


1.3.2GP基準の基本要件

医薬品開発には、新薬候補の有効性・安全性・品質を保証するための様々な規制があります。 

医薬品開発に関する基準は、G(good)とP(practice)の間に文字を挟んだものが多いため、GXP、GP基準などと呼ばれます。

医薬品分野におけるGP基準の起源はGMPであり、アメリカにおいて最初に提唱されました。

日本のGP基準を下に載せます(図1.3.2)。

 

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図1.3.2 日本におけるGP基準(出典元:STNet)

このように、医薬品開発はそれぞれの段階において規制をされており、これらのルールに従って進めていく必要があります。

そのため医薬品開発に携わる人には、医薬品などに対する専門性と規制に対する知識が求められます。


1.4.まとめ

いかがだったでしょうか?

今回は、医薬品開発の歴史と概要について説明しました。

医薬品開発は様々な要素が含まれた複雑なものなので、一つずつ解説していくことによって読んでくださった方が医薬品開発に対する理解を少しでも深めていただければ幸いです。

また、私も医薬品開発はまだまだ初心者なのでご意見・ご感想がありましたら送っていただけると幸いです。

それでは、最後までお読みいただきありがとうございます!

アルギン酸ゲルを用いた細胞培養に関するレビュー論文

こんにちは、すあまです。

今日は自分が読んだ論文について紹介していきたいと思います。

今回読んだ論文は「3D Cell Culture in Alginate Hydrogels」という論文です。

出典:3D Cell Culture in Alginate Hydrogels

www.ncbi.nlm.nih.gov

 1.概要

 まず、ざっくりとした概要を説明すると、この論文では「3Dで細胞を培養する際のアルギン酸塩、特にアルギン酸塩ヒドロゲルの使用に関する情報」がまとめられています。

本ページでは、その論文で特に興味を持った部分について書いていきます。文の後ろについている[]内の番号は、論文の参考文献の番号と対応しています。

2.序論

• ゲルの弾性とヒドロゲルの安定性は、

  • 使用するアルギン酸塩の種類
  • 使用するアルギン酸塩の濃度
  • ゲル化手法の選択(イオンまたは共有結合
  • ゲル誘導イオンとして選択した2価カチオン

以上の条件に影響を受ける可能性が示唆されている。

• ペプチド結合アルギン酸塩を使用すると、細胞とマトリックスの相互作用を制御できる。

3D培養によるメリット

  • 悪性細胞の腫瘍形成を観察できる
  • より精度の高い医薬品開発における安全性試験が可能
  •  移植後の多細胞組織のin vitro培養が可能

組織を構成するほぼすべての細胞は、細胞外マトリックスECM)に存在している。

ECMは、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、糖タンパク質の高度に水和されたゲル状材料に埋め込まれたコラーゲンと弾性繊維の複雑な3次元(3D)繊維網目で構成されている。

3.アルギン酸

アルギン酸塩の特性

  • 生理学的条件でヒドロゲルを作る能力→細胞を生かしたままゲル構造を保持できる
  • 細胞回収のためのゲルの穏やかな溶解→ゲルよる細胞への影響を観察できる
  • 顕微鏡評価のための透明性→光学顕微鏡(倒立顕微鏡)によって細胞を観察できる
  • 非動物起源に加えて栄養素および老廃物の拡散を可能にするゲル細孔ネットワーク
    →3次元培養が可能になる(?)
  • アルギン酸塩での細胞のカプセル化を説明する標準ガイドはASTM International [ 15 ] から入手できる。
  • 中性pHで、アルギン酸は、それぞれ3.38および3.65 のpKa値であるd-マンヌロン酸およびlグロン酸のために、ポリアニオン特性を持っている[ 21 ]。
  • したがって、pKa未満の酸性化は不溶性アルギン酸につながるが、溶液中のアルギン酸分子は、隣接する負電荷間の分子内静電反発により、ランダムコイルの立体構造が拡張される。
  • これにより、粘度がイオン強度、温度、分子量の影響を受ける。
  • 低濃度でもアルギン酸塩の高粘性溶液が得られる[ 21 ]。
  • 細胞にはアルギン酸塩を認識する受容体がなく、市販の通常のアルギン酸塩は超高品質であれば不活性と見なすことができる。
  • 生物医学用途のアルギン酸塩で考慮および管理されるべき不純物は、ASTM F 2067に示されており、エンドトキシン、タンパク質汚染物質、元素不純物、微生物バイオバーデンのレベルに関連している[ 22 ]。
  • アルギン酸塩は、Mgいがいの2価陽イオン存在下でゲルを形成することができる
  • アルギン酸塩は、Ca 2+ <Sr 2+ <Ba 2+のように、二価カチオンに対して異なる親和性を示す[ 28 ]。
  • アルギン酸ゲルネットワークのナノスケールの多孔性は調整可能で、5〜200 nmの範囲である[ 29 ]。
    →これは、栄養素および老廃物及び例えばインスリンドーパミン、エンドスタチン及び神経成長因子のような合成生成物の除去を可能にしうる[30、31 ]。
  • イオン的にゲル化したアルギン酸塩は、クエン酸エチレンジアミン四酢酸(EDTA)やヘキサメタリン酸などの二価陽イオンのキレート剤で処理することで溶解できる[14]。
  • 共有結合によるゲル化方法も研究されている
  • RGD結合アルギン酸塩(図3)はアルギン酸ヒドロゲルと細胞との間の生物学的相互作用を開始する能力を持っている[56、57 ]。

4.3D細胞培養

  • 従来の細胞培養はプラスチックまたはガラス表面で単層(2D)で行われる。
  • しかし、人工の平坦で硬い材料表面に適応することを細胞を強制すると、細胞代謝および変更を変更したり、機能を低下させることにより、予想される動作と同様ではないかもしれない結果をもたらす。
  • 細胞固定化のための3D細胞培養にはいくつかのアプローチがある。
  • 架橋密度に加えて、アルギン酸塩の濃度、アルギン酸塩の種類、および架橋技術の選択(イオンまたは共有)を最適化することにより、アルギン酸塩ヒドロゲルは、ほとんどの種類の組織の弾性に一致するように作成可能(図5)。[69、74、75、76]。
  • マクロポーラス足場は、栄養素、酸素、老廃物の物質移動が強化されるため、より大きな構造物を可能にする可能性がある[ 100 ]。
  • 2014年10月、米国食品医薬品局(US FDA)が主催する公開ワークショップが、「医療機器の積層造形:3Dプリントの技術的考慮事項に関するインタラクティブな議論」というタイトルで開催された。
    →このワークショップで開催されるワークショップの議題、参加者、およびプレゼンテーションは、米国FDAのWebサイトで入手可能[ 116 ]。

5.展望

  • 凍結保存にも使える?
  • 皮膚の3D培養により、皮膚疾患のメカニズムの検証や実験薬の治療可能性の試験など、動物や人間にとって安全でない皮膚科学的研究が可能になる
    心筋幹細胞を足場内に固定することで、移植後も心筋組織内に留まることが示された[ 138 ]
  • Gに富むアルギン酸ヒドロゲルが心臓治療を目的としたMSC培養に最も適していた[ 139]

6.結論

  • 近い将来、細胞間相互作用、組織への成長、幹細胞分化のメカニズム、および薬効の改善を調査するために、細胞を3次元で培養する方法が推奨されると考えられる
  • アルギン酸塩は、RGDなどの細胞外マトリックスタンパク質を模倣するペプチドの付着により修飾でき、それにより、固定化された細胞がアルギン酸塩ヒドロゲルと相互作用している

まとめ

いいかがだったでしょうか?

興味を持ったところのみを紹介したので話が飛んでいる部分もあったかと思いますが、詳細が気になった方は是非リンク先の原文を読んでみてください!

それでは、最後までお読みいただき、ありがとうございました! 

 

 

 

 

生物学:細胞の構造

こんにちは、すあまです。

今回は細胞の構造について解説していきます。第1章で細胞についての概要を書いているので「最初から読みたい」、「そもそも細胞って何?」と思われた方は以前の記事から読んでいただけると幸いです。

suama14.hatenablog.com

それでは前置きはこれくらいにして細胞の構造とはどのようなものかみていきましょう!

1.細胞の構造

1.1.まずは自分たちについて考えてみよう

まずは、私たちヒトの細胞がどのような構造をしているか考えてみましょう(ヒト以外の読者の方すいません)。下図に細胞を顕微鏡で撮影した写真を載せます。

細胞は顕微鏡で観察すると、このように見えます(採取してくる部分や、生物種によって違いはあります)。

それでは、これらの細胞の内側はどのようになっているのでしょうか?細胞を1つ取ってきてその切断面を見ると非常に複雑に見えるので、次の項では簡略化したイメージ図をお見せします。

1.2.体細胞の構造

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細胞のイメージ図

上図が簡略化された細胞のイメージ図です。細胞はこのような中身をしており、様々な形、大きさのものが存在していることがわかります。これらは細胞小器官と呼ばれ、それぞれが細胞の生命活動に関わっています。

細胞小器官にはどのようなものがあって、それぞれどのような働きをしているのか知ることで細胞の機能について少しずつ理解することができます。

それでは、次の項でどのような細胞小器官が私たちの細胞にあるのか説明していきます。

1.3.細胞小器官

1.3.1.細胞核(さいぼうかく)

まず最初に説明するのは細胞核という細胞小器官です。このページでは今後、細胞核のことを単純に核と呼び、説明します。

核は私たちの細胞にとって非常に重要な細胞小器官で、細胞の遺伝情報の保存と伝達を行っています。

遺伝情報というのは、どのような形や機能を持っているのかという情報なので、よく「生命の設計図」という比喩が用いられています。

遺伝情報が正しく保持、伝達できないとガンなどの疾患につながることもあるため細胞における核の役割は非常に重要であるといえます。

1.3.2.ミトコンドリア

次に、ミトコンドリアという細胞小器官について説明します。

ミトコンドリアも非常に重要な役割を担っていて、好気呼吸の場として知られています。

好気呼吸というのは酸素を使って体に必要なエネルギーを作り出す一連の反応のことです。

普段、私たちが無意識に行っている呼吸によって得られた酸素と食物によって得られたエネルギーから実際に身体が使うことのできるエネルギーを作り出す一連の反応がミトコンドリアで行われています。

そのため、生命が生きていくためのエネルギーをミトコンドリアが作り出すという意味でミトコンドリアも非常に重要な役割を果たしています。

1.3.3.リボソーム

リボソームタンパク質合成の場となる細胞小器官です。

タンパク質というのは生物の重要な構成要素で、リボソームでタンパク質合成が絶えず行われることによって私たちの身体は生命活動を滞りなく行うことができます。

1.3.4.中心体(ちゅうしんたい)

中心体は細胞分裂の際に必要となる細胞小器官です。

私たちの身体は細胞によってできているということを前回説明してきました。

つまり私たちが生きていくためには死んでいく細胞と同等もしくは上回るペースで新しい細胞ができてくる必要があります。

新しい細胞ができる際、何もないところから生まれてくるわけではなく、1つの細胞が2つに分裂するかたちでできます(この現象を細胞分裂といいます)。

その際に重要なのが中心体です。

1.3.5.細胞骨格

細胞骨格は、細胞分裂や細胞の形状の保持、細胞の移動などに関わる細胞小器官です。

細胞骨格には

  1. 微小管
  2. アクチンフィラメント
  3. 中間径フィラメント

の3種類が存在しており、それぞれの働きによって生物はその生命活動を行うことができます。

1.3.6.細胞膜

前回、「生物は外部と内部を隔てる細胞によってできている」ということを紹介しました。

その役割を実際に果たしているのが細胞膜です。

細胞膜は外部と内部を隔てている以外に、外部との物質のやり取りを行う役割も果たしています。

1.3.7.小胞体

小胞体は名前の通り、小さな袋状の構造をしています。

小胞体には

の2種類が存在しており、それぞれの名前の由来は電子顕微鏡で観察した際の見た目の違いです(粗面小胞体はザラザラ、滑面小胞体はツルツル)。

粗面小胞体電子顕微鏡で観察すると表面がザラザラしているのですが、これは表面に多数のリボソームが付着しているためです。そのため、粗面小胞体はタンパク質合成に関わっています。

一方、滑面小胞体は物質の輸送経路や貯蔵庫となります。滑面小胞体がどのような機能を担っているかは細胞の種類によって異なっています。

1.3.8.ゴルジ装置

ゴルジ装置は分泌性タンパク質をまとめて小胞にして送り出す働きをしています。

つまり、ほかの場所に輸送したいタンパク質を小さな袋(小胞)の中にひとまとめにして送り出してくれる、宅配便の発送のような役割をしています。

上記の滑面小胞体を通ってきたタンパク質などもこのゴルジ装置から別の場所へ送り出されます。

1.4.第1項まとめ

いかがだったでしょうか?

今回紹介したように、私たちを構成している細胞には、上記のような様々な細胞小器官が存在しています。

これらの細胞小器官がそれぞれの役割を担うことによって、私たちの生命活動は行われています。

また、今回紹介した細胞小器官以外にも、リソソームやペルオキシソームなどといった細胞小器官も存在しています。

それぞれの細胞小器官の形状や、より詳細な機能などについては今後紹介していこうと思うので、今回は

  • 細胞には様々な細胞小器官が存在する
  • 細胞小器官はそれぞれ決まった働きを持つ
  • それぞれの細胞小器官が機能することによって生命活動が行われる

ということを理解していただければと思います。

次回は生物種による細胞の違いについて紹介したいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

 

 

プログラミングをはじめました

こんにちは、すあまです。

 

今回はプログラミングの勉強を始めました、というご報告です。

 

プログラミングに関しては、ほとんど素人なので日々躓いたところをこの場に書き残しておこうと思います。

 

同じような境遇の方の参考になれば幸いです。経験者の方はアドバイス等頂けると非常に助かります。

 

とりあえず、カタチから入ろうということで新しいPCを購入しました。

今まで使っていたPCよりも桁違いにサクサク動くのですでに満足しかけています(笑)。

 

プログラミングの勉強をするモチベーション

 

私は、プログラミングの勉強を通じて以下のことをできるようになりたいと考えています。

以上報告でした。

生物講義:細胞

こんにちは、すあまです。

今回は生物学について書いていきたいと思います。

1.細胞とは

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細胞のイメージ図(出典:統合TV)

 

まず一番最初に説明していくのは細胞についてです。高校や大学で用いられる教科書の多くでは最初に細胞について書かれています。

なぜ最初に細胞について学ぶのかというと、生物を作っている基本単位が細胞だからです。

他の分野について考えてみるとよりわかりやすいと思います。

例えば、小学校で算数を習うときにはまず数字を教わります。また、英語を学ぶときときにはアルファベットから学びます。

これらはそれぞれの分野の基本単位です。

算数の計算では数字が基本単位ですし、英語という言語はアルファベットという基本単位の組み合わせによってできています。

同じように、生物学では細胞が基本単位となります。生物は細胞によってできているため、生物の構造や仕組みを理解するためには、最初に基本単位である細胞について理解する必要があります。

それでは前置きはこれくらいにして、細胞について説明していきたいと思います。

1.1.細胞の定義

まずは、細胞の定義について書いておきたいと思います。

cell 生物体の構造上・機能上の基本単位。細胞質から成り、中に通常一個の核を有し、細胞膜に包まれている一個の微小な生活体。構造によって、原核細胞と真核細胞とに分ける。
共産主義政党などが、地域や職場などを単位にしてつくった党員の末端組織。 宇田川榕庵うだがわようあん植学啓原1833年)が最初だが、孤例で熟せず、中国近世洋学書植物学(1858年)に由来していると言われている

大辞林ではこのように2つの意味を持つ単語として書かれていますが、本サイトでは特に断りがない限り①の定義で細胞という言葉を使います。

1.2.細胞の概要

これまで説明してきた通り、細胞はすべての生物が持っている基本単位です。つまり、すべての生物は細胞でできています。

細胞は生物種やその部位(心臓や脳、皮膚など)によって大きさ、形状、構造などが多種多様です。しかし、生物同士には何か共通しているもの(生物以外とは異なるもの)があります。

 次の項では細胞の特徴や性質について説明し、生物同士の違いや共通点について書いていきます。

2.細胞の特徴

細胞についてより理解してもらうために、まず細胞の特徴について書いていきます。細胞はどれくらいの大きさで、どのような形で、中身はどのようになっているのでしょうか?

2.1.細胞の大きさ

細胞の大きさは多種多様です。多くの場合は数マイクロメートル(µm:ミリメートルの1000分の1)から100マイクロメートルくらいです。最大のものはダチョウの卵で直径15㎝にもなります。

2.2.細胞の形状

細胞の形状も多種多様です。球体や桿体(棒状)、平べったいものや分厚いものなど様々です。生物種や部位によってある程度同じような形をしている傾向があります。

2.3.細胞の構造

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細胞のイメージ図(出典:統合TV)

細胞の構造は上図のようになっています。内部はかなり複雑なので今後さらに詳しく解説します。

ここでは大まかな説明のみにとどめますが、細胞にはまず、外側に細胞膜というものがあります(生物種によっては細胞壁がある)。その内側で様々な活動が行わることで、生物として機能しています。

2.4.細胞の特徴のまとめ

かなりざっくりとした説明でしたが、細胞の特徴は大きさ、形状、構造のどれをとっても生物種によってかなり異なるというのが結論です。

しかし、生物種によって細胞に違いはあれどどの生物にも共通しているものもあります。私たちはそれを無意識のうちに判断することによって生物(動物や植物、細菌など)と無生物(土や水など)を分けているのです。

次の項ではそのような生物の共通点について説明します。

3.細胞の基本的性質

この項では生物に共通している性質について説明します。

生物の共通点として多く挙げられるのは、「細胞からなる」、「代謝が行われる」、「自己複製能を持つ」の3つです。

3.1.細胞からなる

前の項で説明した通り、細胞の特徴は生物種によって様々です。しかし、生物はすべて細胞によってできているという共通点があります。細胞とは外部と内部を隔てるものなので、「内部と外部を隔てるものによって成り立っている」というのが生物であるか見分ける1つの定義ということができます。

3.2.代謝が行われる

2つ目の生物の定義は「代謝が行われる」というものです。代謝とは、生物が外界から取り入れた無機物や有機化合物を素材として行う一連の合成や化学反応のことです。普段、私たちが生きていくには食事などによって栄養を身体に取り込み、それを使う必要がありますよね?このような場面で代謝が行われています。

車はエネルギーであるガソリンを入れれば、それを燃焼してそのまま走ることができます。しかし、私たちが摂った食事をエネルギーとして使うには、消化~吸収の流れを通して自分たちがエネルギーとして使えるように変化させる必要があります。この一連の流れで行われているのが代謝(化学反応)です。ちなみに代謝は外界のものを自分に取り込む過程(同化)と内部のものを使ってエネルギーを作る過程(異化)があります。

3.3.自己複製能を持つ

3つ目の定義は「自己複製能を持つ」というものです。自己複製能とは読んで字のごとく「自己を複製する能力」のことです。余談ですが、生物では何かをできる能力のことを「○○能」と表現することが多いので覚えておくと便利かもしれません。

生物は自己複製能を持っています。ここで、「自己複製と言っているけどそしたら生まれてくる子供はみんな自分と全く同じってことにならないか?」と思われる方もいるかもしれません。

これに関しては少しややこしいのですが、生物は「細胞が自己複製能を持っている」というのが正しいです。どういうことかというと、生物は個体(身体の全体)単位で自己複製を行っているのではなく、細胞単位で自己複製を行っています。そのため、単細胞生物は自己複製を行うたびに自分のクローンを作っていますが、ヒトなどのような多細胞生物では細胞単位で自己複製が行われているため、自己複製は子供ができるときとは仕組みは似ているものの、別の現象であるとみることができます。

生物はこのように自己複製を行うことによって身体を維持したり、成長することができます。

3.4.細胞の基本的性質のまとめ

以上のように3つの点が細胞の基本的性質であり、生物の定義として用いられているものです。

次回以降の講義で細胞の様々な機能について説明していくので、自分なりの細胞の基本的な性質や生物の定義について考えてみると面白いかもしれません。

まとめ

いかがだったでしょうか?

今回は生物を構成している基本単位である細胞について説明しました。

今後の参考にさせていただきたいので感想、ご意見等をお聞かせいただけると幸いです。

生物講義①序章:生物学の定義とこれからの予定

こんにちは、すあまです。

今回は生物学について書いていきたいと思います。

生物学の定義

ここでいう生物学の定義ですが、

生物学とは、生命現象を研究する分野である。 日本の『生化学辞典』によると、生物学は生物やその存在様式を研究対象としている、ということになっており、 Aquarena Wetlands Project glossary of termsの定義では、生物学の研究対象には構造・機能・成長・発生・進化・分布・分類を含むということになっている。 扱う対象の大きさは、一分子生物学における「細胞内の一分子の挙動」から、生態学における「生物圏レベルの現象」まで幅広い。

出典:wikipedia

という定義に基づきたいと思います。

一言でいうと、生物学は文字通り「生物に関することを調べる学問」ということになります。

自分が専門としている心臓などに関しても根底にあるのは生物学の知識なので、そちらに関してもご紹介できればと思い、こちらのページで解説することにしました。

生物学を学んでいない、もしくは復習しなおしたいという方はこちらのコーナーで基礎から学びなおして頂ければと思います。

SUAMA LABで扱う生物学の範囲と到達目標

SUAMA LABで扱う生物学の範囲

生物学に関する一番基礎となる知識は小中学校で習う理科にはじまり、高校生物を経て大学の生物系の学部(理学部、農学部生命科学部など)で細分化されていきます。

当ブログでは主に生命科学部で習うような内容を発信していきます。

生命科学部で習う生物学は主に分子生物学(生物を分子レベルで研究し、その構造や仕組みを調べる学問)、細胞生物学、生化学(生物学と化学の複合分野)、生物物理学(生物学の物理学の複合分野)などが中心となっています。これらの学問は、元をたどると別々に生まれてきたものですが、現在では生化学的な手法を細胞生物学に用いたり、生物物理学的な手法を分子生物学に用いるなど分野の境界があいまいになりつつあります。そのため、まずはこれらの学問の基礎知識を解説していきます。

到達目標

目標は大学の生命科学部において学べる内容をカバーすることです。(主に分子生物学と呼ばれる分野を中心に、必要に応じて化学や物理学、数学などの知識も交えて解説していきます。)

ちなみに私の所属していた学部では教科書として「エッセンシャル生物学」という書籍が用いられていたため、こちらのページではその内容を私なりに一般の方向けにわかりやすくして伝えていけるようにしたいと思います。↓一応エッセンシャル生物学のリンクを下に貼っておきます↓。

www.nankodo.co.jp

 

まとめ

 いかがだったでしょうか?

今回は生物学の定義とこれからの予定について紹介しました。

できるだけ早いうちに記事を更新できるように頑張るのでよろしくお願いします!